< コラム その1 > [ 欧州福祉事情 バリアフリートイレ探訪 ] 2005/04/25 『 日本バリアフリートイレは最先端? 』 ひと昔前まで、北欧、特にスウェーデンの福祉事情は大変進んでいると言われていま したが、近年、日本の福祉商品開発力はめざましく、技術的にも普及の度合いにおいて においても日本の方が進んでいるケースが増えています。 バリアフリートイレはその典型で、自動ドアや自動洗浄装置、各種補助器具や緊急呼 び出し装置など各種機能が完備されたトイレが、ごく当然の存在として、公共び出施設 から一般の建物に至るまで広く日本全国に普及し、その状況は、既に北欧諸国を遥かに 凌いでいると言っても良いでしょう。 しかし一方で、日本のバリアフリートイレは、行政的な強制力により普及を促進させ た弊害として、マニュアル化が極端に進み、結果として、確立した固定概念が、更なる 改善を生み出すの発想力を萎縮させ、硬直化していることも事実です。 『 欧州事例 』 《 オランダ スキポール空港 編 》 オランダの建築は、貪欲な吸収力と、大胆で柔軟な発想力により、ここ数年、世界的 な注目を集めています。2000年に全面改築されたスキポール空港もまた、その建物 は大胆且つスタイリッシュです。乗り継ぎ利用も多い同空港は、オランダのみならず、 欧州の玄関口として、多くの外国人に利用されています。 『 #1 アナログ発想の緊急呼出しスイッチ 』上の写真は、同空港内に設置されているバリアフリートイレ です。床に近い壁に赤い紐が走っていることに注目してくださ い。一見するとそれが何か気付かないかもしれませんが、実は これ、ブースの何処で倒れても手が届く様に考えられた“緊急 呼出しスイッチ”なのです。 『 日本の緊急呼出は機能していない! 』 一見原始的と思われるかも知れませんが、“どこで倒れても 手が届く様にする”ことは、実は非常に難しいファクターで、 有効な解決策が見い出されていませんでした。 現在日本のバリアフリートイレで主流となっている緊急呼出 スイッチは、「大型ボタンタイプ」か「短い紐の先に握り玉が 付いているタイプ」のどちらかです。しかし、実際に床に倒れ 込んで助けを求める際には、スイッチまで這って行く必要があ り、あまり有効に機能してません。設置箇所を増やせば、理論 的には対処できるのかもしれません。 しかし、それでは無数に設置が必要となってしまいますし、 スイッチ一つが高価なこともあり、実際、3つ以上、スイッチ を設置しているバリアフリートイレはまずありません。 その点、このオランダの方式は、単純ではありますが、経済 的ですし、何よりも確実です。 『 先端技術の導入を考える前に 』 日本には、世界に誇る最先端のセンサー技術があります。様々なセンサーによって利 用者の異常を察知するシステムの開発も進められています。しかし「何をもって倒れた と判断するか」が非常に難しく、現状では汎用性が要求される公共のバリアフリートイ レで利用できるセンサーの開発には至っていせん。 現在商品化されているものは、「倒れて意識を失い、動きが数分間完全に止まった時 点」で、初めて緊急事態と判断する方式で、「助けを求めて悪戦苦闘している時」には 機能しません。大掛かりなシステムの割には用途が極めて限定的です。 確かに最先端技術による機器の開発は魅力的ではありますが、オランダのシステムは、 原点に帰り、単純なシステムで、できる可能性を考え直す必要性を再認識させてくれま す。 『 #2 こんなユーモラスなものも・・・ 』 次の写真、なんだか分かりますか・・・? 男性用の小便器 にハエが・・・ 実はこれ、ハエのプリントが便器に施されて いるのです。「"的"があるとついそこをめがけて用を足してし まう」男性の本能を巧みに利用した、床の汚れを軽減させる機 能性商品(?)なのです。 日本の公共トイレでは、張り紙により注意喚起する手法が多 く、「一歩前へ」等の文言はまだ愛嬌がありますが、全般的に あまりセンスの良いものは見受けられません。 最近では、床 の色を変えるなどの方法で、心理的に足の位置を小便器に近づ けさせる手法も増えてきましたが、オランダのこのユーモアの センスは見習いたいものです。 因みに、この方式によって、スキポール空港では、年間の清 掃費用が半減したそうです。 『 日本での購入は? 』 “緊急呼出スイッチシステム”については、残念ながら日本の福祉機器メーカーや輸 入商社による取り扱いはありません。福祉機器展などでも何度も探してみましたが、扱 いは無いようです。現在、直接オランダから輸入出来るかなど、もう一度リサーチし直 しています。詳しいことがわかり次第、またご報告します。 “ハエのプリント付き小便器”は、ヨーロッパ最大手の衛生陶器メーカーの商品です が、こちらについても正規代理店は存在しておりません。こちらは、個人輸入などの方 法で入手することは可能かもしれません。 つづく